学問としての日本姓氏研究の観点から見ても、小鳥遊のような意句由来の苗字は非常に興味深いテーマだ。「月見(つきみ=秋なし)」や「一(にのまえ)」、「九(いちのまえ)」といった珍名と同様、中世から近世にかけての武士や文人たちが好んだ言語遊戯の産物だと考えられている。
明治時代の苗字必称義務令によって平民が自らの姓を登録した際、意図的に粋な判じ物を取り入れた家系があったとも伝えられる。文字そのものを暗号のように見立て、背景にある情景やストーリーを読み手に想像させるこの独特の文化は、日本人の持つ和歌や俳句的な美意識のあらわれと言えるだろう。