武蔵野の豊かな自然を色濃く残す井の頭恩賜公園のすぐ脇に、その店はある。アルファベット表記の看板を掲げるchai breakに足を踏み入れると、まず目を奪われるのは整然と並んだ産地別のシングルオリジン茶葉と、無駄のない所作で鍋を振るスタッフの姿だ。
店主の神原博之が目指したのは、エキゾチックな異国情緒を売りにするエスニックカフェではない。日常の一杯として、本物の紅茶の旨味を最もダイレクトに届ける場所だ。神原は言う。「チャイとは、茶葉の個性を力強く引き出すための煮出し技術そのものである」と。水とミルクの比率、火入れの秒数、空気を巻き込みながら注ぐ落差。一杯のカップに注ぎ込まれる情報量の多さは、もはや一杯の極上スープを仕込む料理人の領域に近い。