石原プロモーションに所属した歴代の俳優や、ドラマ現場を共にしたスタッフたちの回顧録には、カメラが回っていない場での石原裕次郎のリアルな姿が克明に記録されています。
渡哲也や舘ひろしをはじめとする「石原軍団」の面々が一致して語るのは、裕次郎の「気配りの繊細さ」です。撮影現場での彼は、自ら巨大な炊き出しの鍋の前に立ち、若手スタッフやエキストラ一人ひとりに声をかける気さくさを持っていました。画面越しに見せるニヒルなボス像とは対照的に、誰よりも他者への心理的バウンダリーを尊重し、現場の調和を愛した人物でした。
撮影後の酒席でも、無理に高級酒を誇示することはなく、共演者たちとビールジョッキをぶつけ合いながら映画作りの情熱を語り合う姿が日常でした。ブランデーグラスを傾けるダンディな姿は、観客の夢を壊さないために彼がプロとして演じ切った「大スターの仮面」であり、その仮面を完璧に着けこなしたことこそが、石原裕次郎という役者の底知れぬ魅力だったと言えます。