「やけどをしたらすぐにワセリンを厚塗りして保護する」という俗説がありますが、これは医学的に極めて危険な行為です。日本熱傷学会のガイドラインや救急現場の医師たちが警鐘を鳴らすやけどワセリン逆効果理由の核心は、ワセリンが持つ強力な「油膜シールド」にあります。
皮膚が熱源に触れると、熱エネルギーは表皮から真皮へと徐々に深部へ伝導します。この熱伝導を食い止めるために不可欠なのが外部からの冷却ですが、受傷直後に油分であるワセリンを塗布してしまうと、皮膚表面が厚い油膜で覆われ、熱の放散が完全に遮断されます。つまり、肌の上で熱が逃げ場を失い、皮膚深部へとジワジワと熱がこもり続ける「蒸し焼き状態」を作り出してしまうのです。
その結果、本来であれば表皮の赤みだけで済んだはずの軽いやけどが、真皮に達する深い熱傷へと悪化し、強い痛みや水ぶくれ、ひいては消えない色素沈着や瘢痕(やけど跡)を残すリスクを跳ね上げます。やけどワセリン塗るタイミングは、あくまで「熱エネルギーが完全に消失した後」でなければなりません。