デザイン制作の現場や企業のマーケティング現場では、実際にどのような課題が生じているのでしょうか。クラウドソーシングの受託現場、インハウスデザイナー、SNSディレクターらの証言を集約すると、華やかなビジュアルの裏に潜む生々しい摩擦が浮き彫りになります。
都内の広告代理店でアートディレクターを務める30代男性は、現場の切迫した状況を次のように語っています。
「クライアントから『明日の朝までに新サービスのキービジュアルを用意してほしい。イメージは疾走感のあるビジネスマン』と急発注されるケースは日常茶飯事です。しかし、無料サイトで適当に拾った素材を配置すると、クライアントの法務チェックで『このイラストレーターは利用規約で企業のメインビジュアル利用を許可しているか?』と差し戻され、結局朝まで規約の確認と素材の差し替えに追われる事態が頻発しています」
また、ソーシャルメディアのコミュニティ(知恵袋やデザインフォーラム)でも、以下のような切実な相談が後を絶ちません。
- 「『いらすとや』の走る人物イラストを広報誌で使っていたが、気づいたら社内報やパンフレット合わせて1案件で30点以上使っており、後から有償契約の手続きに奔走した」
- 「おしゃれな海外製ベクター素材を無料で使ったつもりが、利用条件にあった『WEBサイトフッターへのリンク記載』を忘れており、権利元から警告メールが届いた」
- 「横向きの走るイラストを左右反転させて使ったら、シャツの合わせ目や利き手の矛盾が生じ、スポーツ経験者から不自然さを指摘されて炎上しかけた」
こうした実態から見えてくるのは、素材選びの手間を省こうとした結果、かえって膨大な確認工数や修正コストを支払っているという皮肉な現実です。特に「走る人」は日常的かつ象徴的なモチーフであるため、視覚的な粗やコンプライアンス上の不備がオーディエンスの目に留まりやすい特性を持っています。