無限城における悲鳴嶼行冥、不死川実弥、時透無一郎、不死川玄弥との死闘の末、黒死牟は首を切り落とされた後も執念で肉体を再生させ、異形の怪物へと変化しました。しかし、実弥の刀身に映った「醜悪極まりない化け物」と化した己の姿を見て、戦慄を覚えます。
「これが私のなりたかった姿なのか?」「武士としての誇りも捨て、弟に勝ちたいがために私はここまで醜くならねばならなかったのか」――その精神的動揺から再生能力が崩壊し、黒死牟の肉体は灰となって崩れ落ちていきました。
そして消滅した彼の衣服の跡に残されていたのは、かつて幼少期に自らが手作りし、弟・縁壱に与えた「古びた木彫りの笛」でした。80歳を越えて再会した縁壱が老衰で息絶えた際、その懐から大切に保管されていた笛を見つけ、激昂して両断したはずのその笛を、巌勝は人知れず拾い上げ、約400年もの間、肌身離さず着物の内側に抱き続けていたのです。
弟を憎み、否定し、その存在を消し去りたかったはずの巌勝が、最も大切に持っていたのが弟との絆の証であったという結末。この演出こそが、彼が単なる冷酷な悪鬼ではなく、不器用で哀しい一人の人間であったことを物語っています。