立教大学からヤクルト、そして父が率いる読売ジャイアンツへと進んだ長嶋一茂の現役生活は、容赦ない比較との戦いだった。どれほど打席で結果を残そうと、「ミスターの息子」という色眼鏡を外されることはない。球場に響く野次と過剰な期待。その重圧が彼の神経を削り取っていった過程は想像を絶する。しかし現役引退後、彼はメディアの世界で独自のポジションを築き上げた。空気を読まない奔放な発言の裏にある卓越した客観性と胆力は、まさに二世という十字架を背負い抜いた者だけが獲得できた武器である。
一方、次女の長嶋三奈が見せた歩みもまた、独自の輝きを放っている。テレビ朝日のスポーツキャスターとして夏の甲子園を長年取材し続けた彼女は、決して父の名声を振りかざすことなく、泥臭く球場へ足を運ぶことで現場の信頼を勝ち取った。球児たちの汗と涙に寄り添う彼女の温かな視線には、野球という競技の残酷さと美しさを誰よりも間近で見てきた人間特有の深みがある。