本作のヒロイン・武藤里伽子に対する視聴者の反応は、初公開当時から極めて激しく二分されてきました。ネット上のコミュニティやレビューサイトでも、「ジブリ史上最もわがままな悪女」「自己中心的で耐えられない」という批判的な声がある一方、「思春期の痛々しいリアルを体現した最高の名ヒロイン」と絶賛する意見が絶えません。
東京から高知の進学校へ不本意な転校を強いられた里伽子は、周囲を見下すような態度を取り、拓から旅費を借りて父親に会うため無断で東京へ連れ出すなど、周囲を巻き込むトラブルを次々と引き起こします。しかし、この身勝手な振る舞いの裏側には、両親の離婚による精神的ショックと、急激な環境変化に適応できない少女の深刻な適応障害・防衛機制が存在していました。
氷室冴子氏による原作小説との違いを精査すると、劇場アニメ版は尺の都合(約72分)上、里伽子のモノローグや父親に対する複雑な愛憎の内面描写が意図的に削ぎ落とされていることが分かります。小説版では彼女の抱える家庭環境の歪みや繊細な苦悩が克明に描かれていますが、アニメ版では「拓の主観視点」に徹底してフォーカスしたため、結果として里伽子の行動の突飛さが際立ち、ファンの間で武藤里伽子の評判が大きく分かれる要因となりました。