スタン・リーが生み出した名フレーズとされる一方で、その思想的源流は18世紀ヨーロッパの政治思想にまで遡ります。「誰の言葉なのか」という問いには、複数の歴史的偉人たちが積み重ねてきた言論の系譜が存在します。
ネット上で頻繁に噂される「哲学者ヴォルテール(Voltaire)発言説」は、近年の文献調査によって典型的な帰属の誤り(アトリビューション・エラー)であることが判明しています。ヴォルテールの膨大な著作集を精査しても、該当するフレーズそのものは確認されていません。
歴史的な公文書として明確に確認できる最古の記録は、フランス革命期の1793年5月8日、フランス国民公会(Convention nationale)が発した布告文です。
「Une grande responsabilité est la suite inséparable d'un grand pouvoir.(大いなる責任は、大いなる権力から不可分に生じる結果である)」
その後、1817年にはイギリス下院でウィリアム・ラム(後のメルバーン子爵)が演説で引用し、1906年には若き日のウィンストン・チャーチルが植民地問題に関する下院演説で「Where there is great power there is great responsibility」と言明しました。さらにアメリカ合衆国第32代大統領フランクリン・D・ルーズベルトも、1945年4月に急逝する前日に執筆していたジェファーソン記念日の未完の演説原稿において、同様の理念を草稿に残していました。