現在見られる雑誌の袋とじは近代的な発明のように思われがちですが、その語源と原型は遠く平安時代から江戸時代にかけて発達した和装本の技法である「袋とじの歴史と語源」に遡ります。
当時の和本は、現代のように裏表両面に印刷する技術や強度の高い洋紙がなかったため、薄い和紙の片面だけに墨刷りし、文字のない裏面を内側にして二つ折りにした紙を重ねて背側を糸で綴じ合わせる手法をとっていました。この折られた外側の輪(小口)が袋状になることから「袋綴じ(ふくろとじ)」と呼ばれたのが本来の由来です。つまり、かつての袋綴じは「裏写りを防ぎ、強度を保つための日常的な標準製本」に過ぎませんでした。
この伝統的な構造を、現代の「秘密の仕掛け」へと反転させたのが、昭和後期の出版メディアです。1970年代から1980年代にかけて、週刊誌の過激なスクープ合戦や成年向けコンテンツの増加に伴い、自治体による有害図書指定の動きが強まりました。そこで大手出版社が編み出したのが、週刊誌グラビアの袋とじという画期的なアイデアでした。
印刷製本の工程において、輪転機から刷り上がった大きな紙を折り畳んで製本する際、通常であれば最後に断裁機で「折り目」を切り落として個別のページにします。袋とじは、この「折り目をあえて切り落とさずに残す(アンカット)」という印刷工程の逆転の発想から生まれました。追加コストを最小限に抑えながら、読者に対しては「開ける快感」と「独占欲」を提供するキラーコンテンツへと昇華したのです。