『RPG』の制作背景を語るうえで避けて通れないのが、作詞を手掛けたFukaseとSaoriの間で起きた決定的な衝突です。当時、東京都内のシェアハウス「セカオワハウス」でメンバー全員が共同生活を送りながら楽曲制作に没頭していた彼らですが、制作のプレッシャーと過密なスケジュールの中で精神的な限界に達していました。
発端は、些細な意見の食い違いから発展した激しい口論でした。当時の音楽雑誌のロングインタビューや後年のテレビ特番の手記において、Saoriは「感情の歯止めが利かなくなり、泣き叫びながら家を飛び出した」と生々しく述懐しています。携帯電話の電源を切り、数日間にわたって行方をくらませたSaoriの失踪劇は、単なる痴話喧嘩の域を超え、バンド解散の危機へと直結する緊迫した事態を招きました。
一人残されたFukaseは、深い自責の念と「彼女がいない音楽活動など何の意味もない」という強烈な喪失感に苛まれます。その極限状態の中で書き殴られたのが、本作の原型となるメロディと歌詞の断片でした。後日、居場所を突き止められたSaoriの元へFukaseから届けられたデモ音源には、失いかけて初めて気付いた仲間への不器用なメッセージが吹き込まれていました。音源を聴いたSaoriが涙を流して帰宅を決意し、二人が言葉を交わしながら共同で作詞を完成させたプロセスこそが、セカオワ RPG 作詞作曲の経緯における最大のハイライトです。