結論から述べれば、おみくじで大吉を引いた際に持ち帰ることは神社神道および仏教の作法として完全に正当な行為です。東京都内の歴史ある神社で奉仕する権禰宜(ごんねぎ)は、取材に対して次のように語っています。「おみくじの紙面で最も重要なのは『大吉』という記号ではなく、その下に記された和歌や神仏の戒め、各項目の教訓です。折に触れて読み返し、自らを省みるために持ち帰ることこそ、おみくじ本来の意義に叶っています」。
一方で、参拝者の間で根強く囁かれる「大吉を結ぶと運気が下がる」という噂の真相はどうでしょうか。調査を進めると、この言説には二重の誤解が絡み合っていることが判明しました。古くから伝わるおみくじを結ぶ理由は、凶や意に沿わない運勢が出た際、境内の木々(神木)の生命力にあやかり「神様と縁を結び直す」「悪運を境内にとどめて祓い落とす」という信仰に由来します。
この伝統的な文脈から転じて、「せっかく授かった良い運勢(大吉)を境内に縛り付けて手放してしまうのは、自ら運気を取り逃がす行為ではないか」という心理的解釈が生まれました。これがネット上で過激化し、「大吉を結ぶと運気が下がる」という都市伝説的な表現に変質したと考えられます。神道において「結ぶ」行為そのものに呪術的な悪影響はありませんが、幸運のメッセージを手元に残して日々の行動に活かすという観点からは、持ち帰りを選ぶ実利的な意義が極めて大きいと言えます。