なぜ川崎にはこれほどまでに質の高い韓国料理店が集積しているのでしょうか。その背景には、大正時代から続く京浜工業地帯の発展と、そこに集まった在日コリアンコミュニティの歴史が深く関係しています。
かつて鉄鋼や化学プラントの工場群で働く労働者たちの過酷な肉体労働を支えたのが、滋養強壮に優れた焼肉やニンニク・唐辛子をふんだんに使った韓国の家庭料理でした。川崎区セメント通り周辺には焼肉店や精肉店、キムチ専門店が自然発生的に立ち並び、日本における「カルビ」や「ロース」を中心とした大衆焼肉文化の発展に寄与しました。
このスタミナ食文化は、川崎の有名なソウルフードである「元祖ニュータンタンメン」の誕生とも密接に呼応しています。豚ガラベースのスープに大量の粗挽き唐辛子、ニンニク、溶き卵、ひき肉を加えるスタイルは、まさにコリアンタウンの食文化と日本の麺文化が融合して生まれた川崎ならではの味覚です。川崎市民にとって「辛くて旨みがあり、スタミナがつく料理」は、単なる一過性の流行ではなく、街のアイデンティティとして深く根付いているのです。