そもそも『オレンジ』は、2000年に発売されたミリオンセラーシングル『らいおんハート』のB面(カップリング曲)として世に出た作品です。タイアップがついた表題曲ではないにもかかわらず、なぜこれほどまでに多くの人々の心をつかみ、カバーされ続けるのでしょうか。
その最大の鍵は、希代のヒットメーカーである市川喜康氏が手掛けた作詞・作曲の完成度にあります。
情景描写の巧みさは特筆すべき点です。「夕方」「駅のホーム」「沈む夕日」といった日常のワンシーンを想起させるキーワードとともに、夕日の象徴である「オレンジ」が、青春の終わりや恋人との別離を鮮烈に彩ります。
さらに、主人公の心理的な成長も見逃せません。冒頭では「さよなら。」と言えば相手の傷が癒えるのかと苦悩していた主人公が、曲のラストでは未練を乗り越え、出会えたことへの心からの「ありがとう。」へと感情を昇華させます。この痛切でありながら前向きな別れの美学が、聴く人の記憶にある大切な思い出と重なり、唯一無二の感動を生み出しています。