モナルダを語る上で避けて通れないのが、「ベルガモット」「ビーバーム」「オスウィーゴティー」という複数の別名による混乱です。特に紅茶のアールグレイで有名な柑橘類「ベルガモット」との違いは、多くの愛好家が一度は突き当たる疑問となっています。
学術的な分類を整理すると、ハーブとしてのモナルダは「シソ科モナルダ属の多年草(草本植物)」であり、紅茶の香り付けに使われるベルガモットは「ミカン科ミカン属の柑橘類(木本植物)」です。全く異なる科の植物ですが、モナルダの葉を揉んだ際に放たれる香りが柑橘のベルガモットオレンジの精油と酷似していたことから、英名で「ベルガモット(Bergamot)」と呼ばれるようになりました。
また、「ビーバーム(Bee balm)」という呼称は、ハチ(Bee)が好む蜜源植物であり、先住民族がハチや虫の刺し傷を癒やす軟膏(Balm)として葉の浸出液を利用していた事実に由来します。学名の「モナルダ(Monarda)」は、アメリカ大陸の薬用植物を世界に紹介した16世紀のスペイン人医師・植物学者ニコラス・モナルデスの名を讃えて命名されたものです。
歴史的には、1773年のボストン茶会事件以降、イギリス産紅茶の不買運動を展開したアメリカ入植者たちが、オスウィーゴ族から教わったモナルダ茶を「オスウィーゴティー(Oswego tea)」として愛飲したエピソードが有名です。モナルダは単なる鑑賞花にとどまらず、人々の健康と歴史の転換点を支えてきた格式高いハーブなのです。