チベットスナギツネの主食は、高原に生息するクビワナキウサギだ。彼らのカロリー摂取量の実に9割以上をこの小さな哺乳類が占めている。だが、捕獲は決して容易ではない。
ナキウサギは地下に複雑な巣穴を張り巡らせており、警戒心も非常に強い。そこでギツネが見せるのが、執拗なまでの「待ち伏せ」と「死角を突くアプローチ」だ。風下に身を潜め、数時間も動かずに巣穴の入口を睨み続ける。ナキウサギが一瞬でも油断して地上に顔を出した瞬間、低空を滑るような猛ダッシュで飛びかかる。派手なジャンプや遠追いではなく、ミリ単位で間合いを詰める静かな狩り。あの静寂な目つきは、一瞬の隙も見逃さない凄腕ハンターの集中力そのものなのだ。