トムとジェリーの作画における最大の特徴は、アニメーション史に輝く「スカッシュ&ストレッチ(押し潰しと引き伸ばし)」の極致にある。金づちで叩かれてペチャンコになるトム、チーズの形に体を変形させるジェリー。この物理法則を無視したコミカルな造形変化こそ、現代のアニメーターやイラストレーターが「描いていて最も気持ちいい」と感じる要素だ。
特に2020年代半ばから続くレトロ・リバイバルの波の中で、当時のセル画が持っていた温かみと、計算し尽くされたダイナミックな構図が見直されている。複雑なディテールに頼らず、幾何学的なシルエットと極限まで単純化されたラインで感情を表現する技法は、現代のミニマルなイラスト表現とも抜群の相性を見せている。