一見すると「水」とは無関係に思える文字にも、この記号が刻まれていることがある。その代表例が「酒」だ。右側の「酉」はもともと醸造用の酒壺を表す象形文字であり、そこに液体であることを明示するために「さんずい」が加えられた。
また、「汁(しる)」や「油(あぶら)」のように、水以外の液体全般へと意味が拡張された例も興味深い。古代の人々にとって、流動性を持つ物質はすべて水と同質の生命力や性質を帯びていると捉えられていたのだ。
日常の語彙を見渡せば、「温」や「清」のように感情や状態の形容にまで広がりを見せる。文字の造形を注意深く観察することは、思考の骨組みを解き明かす作業に他ならない。