デジタルIC内部では、クロック信号に同期して無数のトランジスタが一斉にスイッチングを行います。このとき、わずか数ナノ秒からピコ秒という極めて短い時間に、急峻な過渡電流($di/dt$)が要求されます。
電源ユニットからICの電源ピンまでの配線には、必ず微小な抵抗成分($R$)と配線インダクタンス($L$)が存在します。インダクタンスを持つ配線に急激な電流変化が流れると、以下の物理法則に従って電圧降下が発生します。
$$\Delta V = L \cdot \frac{di}{dt}$$
たとえ配線インダクタンスがわずか数ナノヘンリー(nH)であっても、$di/dt$が急峻であれば瞬時に数百ミリボルト単位の電圧ディップ(電源電圧の急落)が生じます。この過渡電圧変動が許容範囲を超えると、ICのロジック誤認識やフリーズ、予期せぬリセットといった致命的な誤動作を引き起こします。
ここで登場するのがデカップリングコンデンサです。電源ラインの長い配線インダクタンスを迂回し、ICの直近に電荷を蓄えておくことで、急激な電力需要に対して瞬時に電流を供給します。つまり、ICの動作によって生じる電源電圧の揺れが他の回路ブロックへ波及するのを「分離(Decouple)」し、同時に電源ライン側からの過渡変動をICに伝えさせない障壁として機能するのです。