2026年、国際剣道連盟(FIK)の加盟国・地域は100の大台に迫ろうとしている。今やフランス、ブラジル、韓国、米国など、世界各地で日常的に竹刀を交える風景が存在する。そのグローバル化の波の中で、競技者たちの注目を一身に集めているのが、頭に巻く「手ぬぐい(面下)」に染め抜かれた言葉だ。
「言葉の意味を知ることで、ただ打つだけの作業から『剣道』へと意識が変わる」。パリ郊外の道場で教鞭を執るアルノー・デュボワ氏(錬士六段)はそう語る。かつては幾何学模様や記号のように眺められていた漢字が、今では選手のメンタルコントロールに直結する思考のギアとして再評価されているのだ。試合前の控え室で、手ぬぐいに書かれた文字をじっと見つめ、深く息を吐く。そこに言葉の持つ強い心理的アンカー効果が働いている。