トラックの補助減速機構を語るうえで混同されやすいのが、「エンジンブレーキ」「排気ブレーキ(エキブレ)」、そして「リターダー」の役割分担である。これらは段階的に併用される関係にあるが、作動原理と発生トルクには明確な境界線が引かれている。
エンジンブレーキはアクセル開度をゼロにした際、エンジンの圧縮抵抗(ポンピングロス)と内部摩擦によって生じる自然な減速力だ。しかし、燃費向上を狙った近年の高効率・低フリクションディーゼルエンジンでは、自然なエンジンブレーキ力は相対的に弱まる傾向にある。
そこで標準装備されるのが排気ブレーキである。排気マニホールドの下流に設けられたバタフライバルブ(遮断弁)を閉じ、シリンダーからの排気ガス排出を物理的に塞ぐことで、ピストンの上昇運動に強い背圧(バックプレッシャー)をかけて減速トルクを得る。操作が容易でコストも低いため、中型トラックから大型車まで広く普及しているが、制動力の上限はエンジンの排気量と回転数に完全に縛られる。
これらに対し、リターダーはパワートレインの回転そのものをダイレクトに減速させる。排気ブレーキが「エンジン内部の抵抗を増やす間接的な制御」であるのに対し、リターダーは「車軸の回転を力ずくで押さえ込む直接的な制御」という決定的な相違点がある。制動トルクの差は歴然で、大型車用の高性能リターダーは排気ブレーキのおよそ2倍から3倍以上の減速トルク(1,500〜3,000Nm以上)を発揮する。