SNSや大手Q&Aサイトで定期的に炎上交じりに投稿されるのが、「退去時に冷蔵庫下マットを剥がしたら、床が真っ黒にカビていた」という悲痛な報告です。床を保護するために設置したはずのアイテムが、なぜ最悪の事態を引き起こしてしまうのでしょうか。現場の特殊清掃員や賃貸退去の立ち会い検査員に取材すると、その決定的なメカニズムが浮かび上がってきます。
現場検査員の一人は次のように証言します。「退去立ち会いでマットをめくった瞬間、居住者の方が絶句する場面に何度も遭遇しています。ほぼ100%に共通しているのは、マットの裏側に水気が侵入した痕跡があることです」。
原因の筆頭に挙げられるのが、引越し当日の床拭きによる水分残留です。新居への搬入直前、フローリングをウェットシートや固く絞った濡れ雑巾で念入りに掃除し、床材の表面が完全に乾ききらないうちに高密閉なマットを被せてしまうケースが頻発しています。逃げ場を失った水分が何年もの間、冷蔵庫の排熱によって温め続けられ、カビにとって理想的な培養温床へと化してしまうのです。
さらに見落とされがちなのが、日常的な水分の浸入です。自動製氷機の給水タンクに水を入れる際の水滴の飛び散りや、冷蔵庫扉のパッキン劣化による微細な結露水、あるいはキッチンシンクからの跳ね水がマットの縁から毛細管現象によって裏側に吸い込まれます。一度入り込んだ水分は、マットとフローリングが密着しているため自然蒸発しません。「敷いたから安心」と油断し、数年間一切隙間のチェックをしなかった人ほど、取り返しのつかないカビ被害に直面しています。