走者から本塁までの距離はわずか27.431メートル。通常、投手がボールを投げてから捕手のミットに収まるまでは約0.4〜0.5秒、捕手のタッグにかかる時間を合わせても1秒未満の勝負です。三塁走者がトップスピードで本塁に到達するには3秒前後を要するため、普通に走るだけでは絶対にアウトになります。それでもセーフになる背景には、明確な3つの成功条件が存在します。
1つ目の条件は「投手の投球モーションの大きさ・癖」です。特にランナーが三塁にいる際、投手がノーワインドアップや大きなテイクバックで投げる癖を持っていたり、セットポジションからの始動が極端に遅かったりする場合、走者は投手が本塁以外に投げられない不可逆的な動作に入った瞬間にトップスピードでスタートを切ります。右投手が背中を三塁走者に向けて投げるフォームの場合、走者の動きを視界で捉えにくいため絶好の標的となります。
2つ目は「捕手からの返球時の油断」を突くパターンです。投球を受けた捕手が、投手にボールを投げ返すルーティン作業の瞬間、完全に三塁走者への警戒を解くケースがあります。この隙を突いてスタートを切るのがディレードスチール ホームです。一瞬の気の緩みを見逃さず、捕手が返球モーションに入った瞬間に滑り込む高等技術です。
3つ目は「ベンチと打者との阿吽の呼吸」です。奇襲を成功させるには、ベンチから極秘に出されるホームスチール サインを走者が確実に察知し、打者がブラインド役(壁)となって捕手の視界を遮る立ち回りが欠かせません。打者はストライクゾーンを外れた投球に対してあえて打つ構えを見せるなど、捕手のタッグをコンマ数秒遅らせる心理戦を展開します。