童話作家の土家由岐雄によって1951年に発表され、1970年に絵本化(金の星社)された『かわいそうなぞう』は、第二次世界大戦中の東京・上野動物園を舞台にしています。戦況悪化に伴い、空襲で檻が破壊されて猛獣が市街地へ逃げ出す危険を防ぐため、動物園に対して猛獣の殺処分命令が下されたという設定から物語は始まります。
ライオンやトラ、クマなどが次々と薬殺される中、知能の高い3頭のインドゾウ(ジョン、ワンリー、トンキー)の処分が難航します。毒入りのジャガイモを器用に選り分けて吐き出し、注射を打とうにも硬い皮膚に針が何本も折れてしまうため、最終的に「餌と水を与えずに餓死させる」という過酷な手段が選ばれました。
飢えと渇きに苦しむゾウたちは、かつて覚えた芸を必死に披露し、前足を上げて立ち上がり、鼻を高く掲げて飼育員に食べ物をねだります。その健気な姿に涙を流しながらも、命令に背けない飼育員たちはやせ細っていくゾウを見守るしかなく、ついに全員が息絶えるという胸を締め付けられる結末を迎えます。