「そらんじる」の意味とは?漢字「諳んじる」の語源や暗唱との違い・使い方

「そらんじる」の意味とは?漢字「諳んじる」の語源や暗唱との違い・使い方

「そらんじる」の意味とは?漢字「諳んじる」の語源や暗唱との違い・使い方について重要なポイントを解説いたします。最新の情報をご確認ください。

日常の会話や文学作品、ビジネス文書などで耳にする「そらんじる」という言葉。三省堂国語辞典や広辞苑などの主要辞書によれば、「そらんじる」の意味は「何も見ないで、覚えていることを口に出して言う」「記憶して見ないで言えるようにする」と定義されています。

ここで多くの読者が疑問を抱くのが、「そらんじる」の漢字表記です。パソコンやスマートフォンの変換候補には主に二つの表記が登場します。それが「諳んじる」と「空んじる」です。

まず代表的な表記である「諳んじる」ですが、この「諳」という漢字は音読みで「アン」と読みます。漢字の成り立ちを見ると、「言(言葉)」に「音」を組み合わせた会意兼形声文字であり、「口の中で音を繰り返し唱えて暗記する」「深く記憶にとどめる」という意味を持っています。本来、諳んじるの読み方としては「あんじる」とも読まれますが、日本語の語彙形成の歴史において、和語である「そらんじる」の音に対して、その意味を表す漢字として「諳」の字が当てられた経緯があります。したがって、「諳んじる」の意味も「書いたものを見ずに口で言えるように覚える」であり、「そらんじる」と同義です。

一方、もう一つの表記である「空んじる」の意味は、和語本来の語源に直結しています。そらんじるの語源を歴史的に遡ると、平安時代の古語「そらに(空に)」という副詞に行き着きます。当時、書物や手紙などの紙面を見つめるのではなく、「何もない宙(そら)を見つめたまま口にする」「頭の中の余白(空)から言葉を手繰り寄せる」という情景から、「手本を見ずに記憶だけで行う」ことを「そらに」と表現しました。

『源氏物語』や『枕草子』などの古典文学においても、「経文をそらに読む」「歌をそらに覚える」といった用例が頻出します。この「そらに」という副詞に接尾辞「す(動詞化の接尾辞)」が結びついて「そらんず」となり、時代を経て現代の「そらんじる」「空んじる」へと進化を遂げました。つまり、「空んじる」は言葉のルーツである和語の情緒をそのまま残した表記であり、「諳んじる」は意味を漢字の持つ力で補強した漢語的アプローチの表記であると言えます。

池田 達也
著者

池田 達也

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。