優位性を語る上で避けて通れないのが、古典派経済学者デヴィッド・リカードが唱えた貿易理論に端を発する比較優位と絶対優位の違いです。この2つの概念を混同していると、戦略の初歩で致命的な誤判断を下すことになります。
絶対優位とは、ある製品やサービスを生産する際、すべての工程において他者より絶対的な効率・技術力で勝っている状態を指します。一方の比較優位とは、複数の選択肢の中で「他者を犠牲にして自らが最も機会費用を低く抑えられる分野に特化する状態」を指します。どんなに万能なプレイヤーであっても、すべてを自前で抱え込むことは経済学的に見て明確な悪手です。
日本の中小企業や新規事業チームで頻繁に起きている悲劇は、「自社には絶対優位(誰にも負けない突出した技術)がないから勝てない」という思い込みです。実際には、他社と比較して「自社が相対的に得意なこと」に経営資源を集中投下し、不得意な部分は他者や外部ツールに委ねることで、組織全体の生産効率を最大化できます。自社の弱みを受け入れ、何をやらないかを決める選別作業こそが、強固な優位性を築く土台となります。