静岡県民は「表富士」を誇る。駿河湾越しに見える、なだらかな稜線が美しい富士山こそが本物だという主張だ。対する山梨県民は「裏富士」という呼び名を嫌い、五合目までのアクセスや、富士五湖の湖面に映る「逆さ富士」の美しさこそが至高だと胸を張る。この美学の対立は、単なるローカルな意地の張り合いではない。
観光ポスターやPR動画での見せ方一つとっても、両県のこだわりは凄まじい。近年ではSNSでの写真映えを意識したスポット開発競争も激化しており、どちらから見る富士山がより「映える」かという議論は、インバウンド誘致の主導権争いそのものである。