マグロ睡眠の真相と泳ぎ続ける理由|止まると死ぬ過酷な脳の休息法

マグロ睡眠の真相と泳ぎ続ける理由|止まると死ぬ過酷な脳の休息法

マグロ睡眠の真相と泳ぎ続ける理由|止まると死ぬ過酷な脳の休息法にまつわる役立つ知識を分かりやすく発信ます。

マグロが眠っている間も泳ぎ続けなければならない根本的な理由は、その特殊な呼吸生理にあります。タイやコイなど沿岸や河川に棲息する一般的な魚類は、口とエラ蓋(えらぶた)をリズミカルに開閉させる「口腔ポンピング」によって、静止した状態でも新鮮な海水をエラへ吸い込むことができます。

一方、外洋を高速で泳ぎ回るマグロやカツオなどのサバ科回遊魚は、進化の過程でエラを自力で動かす筋肉系を極限まで退化させました。その代わりに獲得したのが、口をわずかに開けた状態で前進し、前方から押し寄せる水流をエラに直接通過させて酸素を取り込む「ラム換水法(Ram ventilation)」と呼ばれる呼吸様式です。

ラム換水法は、高速で泳ぐ際の呼吸抵抗を最小限に抑え、膨大な酸素を効率よく取り込めるという圧倒的な運動アドバンテージをもたらしました。しかしその代償として、「前進を停止=エラへの酸素供給が完全遮断」という不可逆の生存条件を背負うことになったのです。遊泳を完全に停止したマグロは、わずか数分で酸欠に陥り、自重で深海へと沈降しながら窒息死に至ります。これが、「止まると死ぬ」という過酷な生態の科学的真実です。

井上 凛
著者

井上 凛

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。