現代の音楽市場において本件のようなアーティスト誤認が頻発する背景には、メディア環境がCDパッケージからデジタルストリーミングへ移行したことによる「文脈の剥離(デコンテクスチュアライゼーション)」という情報社会学的な構造変化が存在します。
かつての音楽鑑賞は、CDジャケットを手に取り、クレジット欄に記された作詞・作曲者やプロデューサーの名前を視覚的にインプットする体験を伴っていました。しかし、アルゴリズムが個人の好みに合わせて選曲を自動生成する現代では、楽曲の「雰囲気」「メロディの質感」のみが切り取られて消費されます。その結果、リスナーの中で類似した感情を喚起するアーティスト同士が無意識に同一グループとして統合されてしまうのです。
ストレイテナーの『シーグラス』も、back numberの珠玉のラブソング群も、どちらも日本のロック史に刻まれるべき独自の一等星です。誤認を解消した上で両者の作品を改めて聴き比べることは、それぞれのバンドが持つ唯一無二の作家性を再発見する豊かなリスニング体験へと繋がります。