昭和から平成、令和に至る日本のポップス史において、日本語の美しさを誰よりも重んじてきた作詞界の巨匠・松本隆氏。その松本氏が、デビュー曲『硝子の少年』で見せたノスタルジックで格調高い歌謡ロックの世界から一転、2ndシングルに選んだキラーワードが「真剣(マジ)で」でした。
報道関係者や音楽誌の過去インタビューにおいて松本氏が明かした創作の背景によると、この言葉は単なる思いつきの流行語採用ではありませんでした。当時18歳前後だった堂本光一さんと堂本剛さんが放つ、少年から大人へと移行する刹那の危うさ、そして「嘘や建前を拒絶し、剥き出しの真実だけを信じたい」という思春期特有の焦燥感を表現するには、既存の美しい修辞(レトリック)では足りなかったのです。
「本気」や「真剣」と書いて「マジ」と読ませる当て字の手法は、当時の若者カルチャーの息吹をそのまま五線譜に閉じ込めました。哀愁と疾走感が交錯する馬飼野康二氏のマイナー調メロディに乗ることで、「マジで」という日常会話のフレーズは、決して軽薄に響くことなく、むしろ心臓を直撃するような切迫した誓いとしてリスナーの耳に突き刺さったのです。