ネット検索や知恵袋などで頻繁に見受けられる「女の子のエコー写真に小さな子宮が写っていた」という体験談ですが、結論から言えば、胎児の子宮が通常のエコーで見えるかという問いに対する産科医学的な回答は「一般的な2D経腹エコーでは、性別判定の根拠として子宮そのものを視認することはほぼ不可能」です。
胎児の体内において、子宮は骨盤腔の深部に位置し、妊娠中期(16〜23週)の時点では親指の爪よりも遥かに小さく、厚みもわずか数ミリメートル程度しかありません。さらに、筋肉組織である子宮は周囲の腸管や軟部組織と超音波の音響インピーダンス(反射の強さ)が酷似しているため、病的な卵巣嚢腫や腹水などの異常が存在しない限り、白黒の断層画像で正常な胎児子宮の輪郭を同定することは極めて困難です。
では、なぜ「子宮が見えた」という情報が拡散しているのでしょうか。産科医への取材や現場カンファレンスの報告によると、主に以下の2つの誤認が原因であることが判明しています。
第一に、赤ちゃんの「膀胱(ぼうこう)」の黒い影を子宮と混同しているケースです。胎児の骨盤内断面をエコーで捉えると、尿が溜まった膀胱が円形または楕円形の黒い抜けた領域(無エコー域)として明瞭に描写されます。この膀胱は男の子にも女の子にも必ず存在するものですが、臓器の知識がない保護者が「お腹の中の丸い袋=子宮」と早合点してしまう傾向が見られます。
第二に、医師が「女の子の特徴(外性器)が見えますね」と説明した際、受診者が「女性の器官=子宮が確認できた」と脳内で言葉を変換して記憶してしまうパターンです。実際に医師が確認しているのは内性器の子宮ではなく、股の間に形成される外性器の形状に他なりません。