1990年代から2000年代初頭にかけて、日本の眼鏡市場は大きな転換点を迎えていた。当時、眼鏡といえば百貨店や駅前商店街の老舗で購入するものが主流で、フレームと度付きレンズを合わせれば5万円から10万円に達することも珍しくなかった。度数が強いレンズや乱視対応、遠近両用レンズを選ぶたびに追加料金が積み上がり、最終的な支払額が不透明になりがちだった時代である。
そこに風穴を開けたのが、「フレーム+レンズ+ケース一式で2万円(税別)」という明朗会計を掲げた弐萬圓堂だった。どんな度数でも、乱視でも薄型レンズでも追加料金を取らない「ワンプライス均一」の打ち出しは、高価格に不満を抱いていた消費者に強烈な衝撃を与えた。CMには名優・神田正輝さんを長年にわたり起用。「どんな度数でも弐萬圓」「追加料金なし」という誠実で重厚な語り口は、特に40代以上のミドル・シニア層から絶大な信頼を獲得した。
最盛期には東日本を中心に約220店舗を展開し、年商は200億円規模を突破。広大な駐車場を備えた郊外ロードサイドの独立型店舗は、車社会である地方都市の生活動線に完璧に合致していた。しかし、その絶対的な強みであったはずのビジネスモデルこそが、時代の不可逆な潮流に呑み込まれる引き金となった。