多くの日本人がつまずきやすいのが、「グラシアス」「グラツィエ」「オブリガード」の混同です。これらはすべて地理的・歴史的に近しいヨーロッパの「ロマンス諸語(ラテン語から派生した言語群)」に属しているため、響きや成り立ちが極めて似通っています。
まず、イタリア語グラツィエとの違いですが、イタリア語では「Grazie(グラツィエ)」と綴り、語尾が「e」で終わります。どちらも同じラテン語「gratia」の複数形から派生した兄弟のような単語ですが、スペイン語は語尾が「-as(ア・ス)」、イタリア語は「-e(エ)」となります。カフェやイタリア料理店で誤って「グラシアス」と言ってしまうと、店員がイタリア系の場合はスペイン語で返答されて苦笑いされるといった事態も起こり得ます。
さらに、ポルトガル語オブリガードとの違いは語源の成り立ちそのものにあります。ポルトガル語の「Obrigado(オブリガード)」は英語の「obliged(義務を負った)」と同源で、「あなたにご恩を受け、お返しをする義務を感じています」というニュアンスから生まれた言葉です。最大の特徴は、話者の性別によって語尾が変化する点であり、男性は「Obrigado(オブリガード)」、女性は「Obrigada(オブリガーダ)」と言わなければなりません。一方、スペイン語の「Gracias」は話者や相手の性別を問わず常に「Gracias」のまま変化しません。