現在、ネット上で「おにたろう」という検索語句が急浮上している背景には、鬼太郎のルーツ探訪だけでなく、出版界を揺るがした一冊の話題作の存在があります。
それが、人気お笑いコンビ・見取り図のリリー氏が手掛けたデビュー絵本『ももからうまれたおにたろう』(サンマーク出版)です。本作は出版界で権威ある「MOE絵本屋さん大賞」新人賞5位に入賞し、キングコングの西野亮廣氏をはじめ各界著名人が絶賛したことでロングセラーを記録しています。
物語は「もしも桃太郎の桃が、おばあさんではなく鬼ヶ島に流れ着き、心優しい鬼に拾われて育てられたら?」という大胆なIF設定から始まります。鬼たちは、桃から生まれた人間の赤ん坊を「鬼の子」と信じ込み、「おにたろう」と名付けて深い愛情を注ぎます。しかしやがて、実の親が迎えに来るという運命の別れが訪れます。
報道機関のインタビューでリリー氏は、「母子家庭だったけれど、僕は全然幸せだった。血の繋がりや世間の枠組みではなく、注がれた愛そのものが人を育てる」という自身の原体験を語っています。この構造は、奇しくも水木しげる氏の『鬼太郎』が提示した「異形の存在(目玉おやじや妖怪たち)が、孤独な赤子を全身全霊で守り育てる」という不変の家族愛のテーマと美しく呼応しています。