ここで改めて、本作の物語構造とラストシーンの意味を整理します。離島から東京へ家出してきた高校1年生の森嶋帆高は、祈ることで天気を晴れにできる不思議な力を持つ少女・天野陽菜と出会います。二人は天気を晴れにする「お天気ビジネス」を始め、人々に笑顔をもたらしますが、その代償は陽菜自身の身体が人柱として天に消えることでした。
物語のクライマックス、帆高は警察の追手を振り切り、廃ビルの屋上にある鳥居をくぐって天上の世界へと飛び込みます。世界を元の青空に戻すため犠牲になろうとする陽菜に対し、帆高は魂の底から叫びます。「天気なんて狂ったままでいいんだ!」と。この瞬間、少年は世界全体の利益をかなぐり捨て、個人の愛を選び取りました。
3年後、降り止まない雨によって東京の東半分は水没。かつて江戸時代に入り江だった土地へと戻っていきます。作中に登場する老婦人・冨美が語った「東京のあたりはさ、もともと海だったんだよ」という台詞は、本作の最大の伏線です。天候異変を人間の傲慢さでコントロールしようとするのではなく、変化した過酷な現実を受け入れ、その上で生き延びる道を選ぶ。ラストシーンで再会した帆高と陽菜が交わす眼差しは、まさに「Weathering with You」の言葉通り、水没した都市で力強く生きていく二人の宣誓そのものでした。