「あの鐘を鳴らすのはあなた」が世に放たれたのは、1972年(昭和47年)3月25日のことでした。和田アキ子にとって通算11枚目のシングルとなったこの楽曲は、当時すでに時代の寵児となりつつあった作詞家・阿久悠と、卓越したメロディセンスを誇る作曲家・森田公一のコンビによって紡ぎ出されました。
当時の歌謡界は、女性歌手といえば儚げな失恋ソングや可憐なアイドル歌謡が全盛の時代です。しかし、阿久悠は和田アキ子という不世出のボーカリストが持つ、圧倒的な体格とハスキーで芯のある歌声、そして何よりも彼女の底抜けの人間味に強いインスピレーションを受けました。「彼女には、ちっぽけな色恋沙汰を歌わせるのではなく、黒人音楽のゴスペルのように人々の魂を揺さぶる大きな歌を歌わせたい」――その強固な意志が、この不屈のメッセージソングを生み出す原点となったのです。
森田公一が書き上げたメロディは、抑制の効いた静かなバースからサビへ向けてドラマチックに感情が解き放たれる、極めて重厚な構成を持ちます。和田アキ子のパワフルなボーカルと重なることで、日本のポップスシーンでは類を見ない、祈りにも似たエモーショナルな名曲が完成しました。