海上自衛隊において「全通甲板」を持つ艦艇の歴史は、1970年代のはるな型(DDH)、1980年代のしらね型(DDH)という、船体後部にヘリ甲板を持つ形態からスタートしました。その後、2009年に就役した「ひゅうが型」によって初めて艦首から艦尾まで突き抜けた全通甲板が採用されます。
ひゅうが型の運用ノウハウをもとに設計されたいずも型は、建造当初から「将来的な多用途拡張性」を織り込んで設計されていました。エレベーターの耐荷重(約30トン級対応)や格納庫の高さ、甲板下のスペース配分などは、当初の公式名目であった「大型ヘリコプター(MCH-101や陸自CH-47)の同時運用」「大規模災害時の病院船機能・物資補給拠点」としての機能を満たすと同時に、将来の固定翼機運用を物理的に排除しないマージンが確保されていたのです。
2025年、防衛省は実質的な任務形態の変化に合わせ、いずも型の艦種区分表記を整理する方針を示しました。しかし、専守防衛の建前から「攻撃型空母(他国を壊滅させる能力を持つ大型空母)」の保有は憲法上許されないとする政府解釈を堅持するため、「多用途運用護衛艦」という呼称が維持されています。この論理的整合性の維持こそが、日本の安全保障政策における高度な政治的バランスの産物といえます。