米津玄師というクリエイターの本質を理解する上で、決して切り離せないのが「ハチ」名義でのボーカロイドプロデューサーとしての活動歴です。公式レーベル「REISSUE RECORDS」のプロフィールにも記されている通り、1991年生まれ・徳島県出身の彼は、作詞・作曲・編曲・プログラミング・歌唱・演奏のみならず、ジャケットイラストやMVのアニメーション制作まで独力で完結させる類まれな才能を持って世に出ました。
ニコニコ動画からYouTubeへと活動の場を広げていったハチ名義の代表曲は、現在の公式チャンネルでも大切に公開・保存されており、今なお若い世代のリスナーを驚嘆させています。
- 「マトリョシカ」:不協和音と疾走感あふれる言葉遊びが融合した、ボカロ史に残る伝説的ナンバー。YouTubeでも数千万回再生を記録。
- 「パンダヒーロー」:退廃的な世界観と中毒性の高いビートで、当時のネットカルチャーを席巻した代表作。
- 「結ンデ開イテ羅刹ト骸」:和風ホラーとアングラ演劇の空気をまとった、初期ハチの毒気と美学が凝縮された傑作。
- 「砂の惑星」:初音ミク「マジカルミライ 2017」テーマソングとして制作され、急速に変化するボカロシーンへの痛烈なメッセージとして巨大な議論を呼んだマイルストーン。
「リビングデッド・ユース」や「ポッピンアパシー」といった本名名義初期の作品群を観直すと、ハチ時代から培われた「異形のものへの愛着」「孤独のスケッチ」「歪んだリズムへの偏愛」が、極めて高い純度でポップスへと昇華されていく変遷が克明に分かります。すべてのクリエイティブを自らの美学で統括できる全方位クリエイターだからこそ、YouTubeという視覚と聴覚が一体化した舞台で絶対的な存在感を放ち続けているのです。