板橋区立美術館が「公立美術館の理想形」として美術関係者から一目置かれる最大の理由は、開館当初から貫く明確なコレクション方針にあります。流行の西洋印象派などに依存する多くの地方館とは一線を画し、「江戸狩野派を中心とする近世絵画」と「ボローニャ国際絵本原画展に代表される現代絵本・グラフィック」という、一見対極にある2つの軸を掘り下げ続けてきました。
とりわけ夏の名物として定着した板橋区立美術館 ボローニャ国際絵本原画展は、イタリアのボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアで行われるイラストコンクールの入選作品を日本でいちはやく一堂に展示する特別展です。1981年の初開催以来、世界中のイラストレーターにとっての登竜門として機能し、ここでの展示をきっかけに第一線へと羽ばたいた絵本作家は枚挙にいとまがありません。館内が国際色豊かな色彩と独創的な表現で満たされるこの期間は、全国からクリエイター志望者や親子連れが集まります。
一方、秋から冬にかけての主役となるのが、板橋区立美術館 江戸狩野派 収蔵品を中心とした企画です。かつて「型通りの退屈な御用絵師集団」と過小評価されがちだった狩野派の知られざる画家たちや、奇抜な発想で異彩を放った町絵師たちにいち早く光を当てたのは、他ならぬ同館の学芸スタッフでした。館内の展示室に足を踏み入れると、教科書的な美術史の枠組みを鮮明に覆す、ユーモラスで自由闊達な江戸絵画の世界が眼前に広がります。