SNSや動画共有プラットフォームで錯視画像が投稿される際、決まって添えられるのが「動いて見える画像 ストレス度チェック」や「疲れている人には激しく回転し、健康な人には止まって見える」といった解説文です。「画像が高速で回っているから自分は過労死寸前かもしれない」と本気で心配するユーザーの投稿も散見されます。
この言説は事実なのでしょうか。結論から言えば、「静止画の回転速度でストレス度や疲労度を測れる」という医学的・心理学的根拠は一切存在しません。
錯視の第一人者である研究機関や日本認知心理学会の知見でも、周辺ドリフト錯視の見え方は「被験者の自律神経状態や心理的ストレス値」とは直接相関しないことが実証されています。では、なぜこのような言説がまことしやかに定着したのでしょうか。背景には2つの理由があります。
第1に、生理学的な目のコンディション変化です。長時間のデスクワークやスマートフォン閲覧によって眼精疲労が蓄積すると、ドライアイや調節緊張によって瞬きの回数が増加し、視線が定まらなくなります。その結果、眼球運動の頻度が増え、錯視が一時的に強く感じられるケースはあります。しかしこれは「目の表面の疲労や乾燥」による物理的影響であり、精神的ストレスを客観計測しているわけではありません。
第2に、心理学における「バーナム効果」とバイラルマーケティングの罠です。「あなたは疲れていますね」という誰にでも当てはまる文脈を用意することで、画像のシェア数やエンゲージメントを跳ね上がらせるネット上の手法が定着してしまった結果、医学的な装いをまとったフェイク情報として拡散され続けているのです。