1974年、日本映画産業に激震が走った。名優・丹波哲郎が環境学者役として鬼気迫る怪演を見せた映画『ノストラダムスの大予言』の劇場公開である。東宝株式会社が総力を挙げて製作したこの作品は、単なる娯楽作の枠を完全に踏み越えていた。
スクリーンに映し出されたのは、放射能汚染によって巨大化した動植物や、狂気に陥った人間たちの凄惨な姿だ。SFパニックの金字塔を目指した野心作だったが、被爆者団体などからの強い抗議を受け、劇場公開からわずか数カ月で事実上の上映中止に追い込まれる。以降、ビデオ化も地上波再放送も禁じられ、日本映画界最大のタブーとして闇に葬られた。
だが、その過激な映像表現の根底にあったのは、無軌道な経済成長と環境破壊に対する痛烈な文明批評だった。ディザスター映画としての完成度の高さと、そこに込められた真摯な警告は、皮肉にも作品の封印によってカルト的な神話へと昇華していく。