2026年の夏、信州を襲ったのは観測史上最高レベルの高温と、極端な少雨だった。棚田への水源となる湧き水や沢の流量は激減し、各田んぼへ均等に水を配給する作業は極度の緊迫感に包まれた。
「水が足りなければ、月を映すどころか稲そのものが枯れてしまう」。そう語るのは、現地で代々棚田を耕してきた70代の農家だ。水路の末端に位置する区画では、昼間の蒸発量が給水量を上回り、鏡面のような水面を維持することが物理的に不可能になりつつある。水利権を巡る調整も、高齢化した農家にとっては身体的・精神的に大きな負担となっているのが実情だ。