ドーハの悲劇を語る上で欠かせないのが、当時ボランチとしてピッチに立ち尽くしていた森保一の存在です。オフト監督に見出され、無名から代表のレギュラーへと駆け上がった森保にとって、この敗戦は生涯消えることのない心の傷となりました。
しかし、歴史は数奇な巡り合わせを用意していました。約30年の歳月を経た2022年、日本代表監督としてカタールW杯を指揮した森保は、同じカタールの地で強豪ドイツ、スペインを撃破するという歴史的快挙を成し遂げます。メディアはこの大金星を「ドーハの歓喜」と報じました。
1997年に延長Vゴールで悲願のW杯初出場を決めた「ジョホールバルの歓喜」を経て、日本サッカーが積み上げてきた経験は、ドーハの痛みを糧にして実を結んだのです。試合後のインタビューで森保監督が見せた涙は、1993年の悲劇を経験した当事者だからこその深い重みを持っていました。