海老のうま煮を調理した際、身がゴムのように硬く縮んでしまったり、殻の色が鮮やかな赤色にならず茶褐色にくすんでしまったりする現象には、明確な科学的理由が存在します。
最大の原因は、海老の筋原線維タンパク質(ミオシン・アクチン)の熱変性温度を超えた過加熱です。海老のタンパク質は約60度で凝固が始まり、70度を超えると急激に水分を放出して収縮します。一般的な煮物のように弱火で10分以上コトコト煮込んでしまうと、細胞内の水分と旨味エキスがすべて外に流出し、繊維が固く締まってしまうのです。
また、色がくすむ原因は主に2点あります。第1に、殻の表面に付着した汚れや雑菌、背わたの残存が加熱時に煮汁へ溶け出し、濁りを生じさせること。第2に、海老の赤色色素である「アスタキサンチン」がタンパク質から分離して鮮紅色に発色する際、加熱不足または醤油の濃色化によるマスキングを受けることです。美しい紅色を引き出しつつジューシーな弾力を残すには、「強火短時間ボイル+煮汁漬け込み」というプロのアプローチが不可欠となります。