この事件が社会に与えた最大のショックの一つは、殺害という物理的な暴力だけに留まらなかった点にある。加害者は殺害直前、掲示板やSNS上に被害者のプライベートな写真や動画を投稿。瞬く間にネット上の匿名掲示板やまとめサイトへと拡散した。デジタル空間における「個人の尊厳の殺害」が、現実の殺人と同時に行われた瞬間だった。
当時は「リベンジポルノ」という言葉自体が日本で一般化しておらず、法的な対処法も追いついていなかった。一度ネットに流出したデータは、完全に削除することが不可能に近い。被害者とその遺族を二重三重に苦しめるこの陰湿な手法は、日本社会に「デジタル被害」の凄惨さを強烈に焼き付けることとなった。