道具の進化は、生き残りをかけた環境変動への応答そのものです。日本列島の旧石器時代はおよそ3万8000年前から1万6000年前頃まで続いたとされています。
当時の日本列島は最終氷期の寒冷な気候下にあり、海水面は現在より約100メートル以上低下していました。針葉樹林や草原が広がり、獲物を追って数十人規模の小集団で移動を繰り返す「遊動生活」が基本でした。定住しない彼らにとって、重い土器や砥石を持ち歩くことは不可能であり、「現地で軽量かつ鋭利な刃物を瞬時に作り出し、使い捨てまたは再加工できる打製石器」こそが最も合理的な生存ツールだったのです。
約1万1500年前に氷期が終わり温暖化が進むと、日本列島は落葉広葉樹や照葉樹の鬱蒼とした森林に覆われました。巨大獣は絶滅し、すばしっこいシカやイノシシ、そしてドングリやクリなどの植物資源が主食となります。この環境激変に対応するため、人類は弓矢を開発し、堅果類を煮炊きする土器を生み出し、大木を切り倒すための磨製石器を実用化させました。