「失念しておりました」は正しい敬語ですが、すべての謝罪の場面で万能というわけではありません。状況や相手との関係性によっては、かえって「反省が足りない」「言葉だけで取り繕っている」とマイナスに捉えられるケースがあります。
特に取引先に対する重大な契約不履行や納期の遅延において、「失念しておりました」とだけ伝えるのは極めて危険です。相手側から見れば、「忘れていた」というのは社内都合の言い訳に過ぎず、ビジネス上の責任を軽視しているように映ります。重大なトラブル時には、小手先の敬語に頼るのではなく、「私どもの不手際により」「確認を怠ってしまい」と過失を率直に認め、深謝する姿勢が求められます。
また、強調表現として使われがちな「完全に失念しておりました」というフレーズにも注意が必要です。「完全に」を付けることで反省を強調しているつもりでも、受け手には「完璧に頭から抜け落ちていた=それほど優先順位を低く見なされていた」という不快感を与えかねません。ビジネスメールでは「完全に」といった修飾語は避け、事実とお詫びを端的に述べるのが鉄則です。