診断を受けた飼い主が最も恐れるのが予後に関する現実です。ネット上には「発症すれば長生きできない」という極端な言説が散見されますが、実際の猫の水頭症の寿命は、基礎疾患の有無、重症度、そして治療介入のタイミングによって極めて広い幅を持っています。
臨床データおよび専門医の報告によると、重度の神経症状(昏睡や難治性てんかん重積状態)を呈した状態で放置された場合、数日から数週間で命を落とすケースは珍しくありません。しかし、軽度から中等度の段階で早期発見され、適切に脳圧コントロールが行われた群では、猫の水頭症生存率は大幅に向上します。内科治療に良好に反応した猫が、発症後5年〜10年以上にわたって通常の猫と大差ない天寿を全うする事例も数多く報告されています。
生存曲線を大きく分ける決定的な要素は「脳実質がどれだけ残存しているか」と「薬物への反応性」です。生後数カ月の幼齢期に発見された先天性水頭症であっても、VPシャント手術によって脳室の圧力が速やかに減圧されれば、残された大脳組織の代償機能によって正常に近い運動機能を取り戻すことがあります。一方で、成猫の後天性で悪性脳腫瘍が原疾患である場合は、水頭症自体のコントロールができても基礎疾患の進行により余命数ヶ月〜1年程度にとどまるケースがあり、個々の病態を冷徹に見極める必要があります。