『シクラメンのかほり』の歌詞が持つ独特のリズムと格調高い言葉選びには、日本の近代文学からの色濃い影響が見られます。小椋佳自身が明かしている通り、詩人・北原白秋の代表作『落葉松(からまつ)』が創作の大きなインスピレーション源となりました。
『落葉松』に流れる「からまつの林を過ぎて、からまつをしみじみ見つれ…」という七五調・五七調の流麗な韻律と、もの悲しくも澄み切った自然観は、『シクラメンのかほり』の「これほど〜ものはない」「うす紅色の〜」といったフレーズの反復構造に見事に応用されています。
歌謡曲の枠組みに近代詩の洗練された語彙とリズムを持ち込んだことで、従来の演歌やポップスとは一線を画す、文学的な薫り高い名曲が誕生することとなりました。