今半すき焼き具材定番として欠かせないのが、以下の厳選された食材たちです。
・千住葱(長葱):斜め切りまたは筒切りにし、割下で焼き色をつけて甘みを引き出す。
・焼き豆腐:しっかり水切りされた木綿の焼き豆腐。割下の旨味を吸い上げるスポンジの役割を果たす。
・春菊:葉先の柔らかい部分を使用。火が通りやすいため、最後にサッとくぐらせる。
・椎茸・えのき:グアニル酸による相乗効果で、肉のイノシン酸、昆布だしのグルタミン酸と旨味の三重奏を奏でる。
・糸こんにゃく(しらたき):下茹でしてアクを抜いたもの。後述する配置の鉄則を守る。
調理の順序には合理的な理由があります。最初にお肉を1〜2枚焼いて極上の脂を鍋にまとわせた後、長葱と焼き豆腐を投入します。長葱の表面をキャラメリゼするように焼き付け、焼き豆腐に肉の旨味が溶け込んだ割下を吸わせます。その後にキノコ類やしらたきを配置し、野菜から出る水分と割下が混ざり合うスペースをコントロールします。
ここで極めて重要なのが、割下煮詰まり防止の理由を理解することです。野菜から水分が出る一方で、加熱が続くと水分は蒸発し、糖度と塩分濃度が急激に上昇します。高濃度の割下は浸透圧の差によって肉の細胞から水分を暴力的に奪い去るため、肉を硬くする最大の引き金となります。鍋肌が焦げ付く兆候を見せたり、泡が大きくなって粘り気が出たら、即座に昆布だしまたは水を少量注ぎ入れ、常に「サラサラとした状態」を保つのが名人の技です。